【名前】
けんちゃん
【現役or何浪か】
2浪
【高校(任意項目)】
東京都立東大和南高等学校
【早稲田の学部】
商学部
早稲田合格体験記
『好きな人が出来た。別れよう。』
当時付き合っていた彼女から唐突に言われた。
僕は言われた瞬間に天井とにらめっこ。
しばらくしてから涙が頬を伝う。
悔しかった。悔しかった。
高校時代、部活に明け暮れていた僕は、授業なんて上の空。
英語や古文なんて異世界の呪文。
勉強をすることに目的なんて見出していなかった。
そんなどうしようもない僕を支えてくれていた唯一の彼女ももう居ない。
そんな折に英語の授業中に先生が言った。
先生「えー、ボキャブラリーコンテストを開催します。英単語を競ってもらいます。上位者は廊下に貼りだします。」
ここで単細胞の僕の脳みそが1つの仮説を打ち立てた。
俺(もしここで1位になって廊下に貼り出されたら元カノを見返せるかもしれない。)
これがモチベーションだというとしょうもない気がするが、
失意の底に居た僕にとっては単語を覚えるのに十分すぎる動機だった。
今まで勉強なんてしていないので、突然勉強を開始した僕への周りの奇異の目。
でもそんな事は気にならなかった。
1年後、僕は年間1位になった。
しかし、受験は甘くない。
英単語しか武器の無い僕は現役受験に大失敗。
第一志望はおろか、滑り止めを含むすべての受験校に落ちてしまった。
行き先なし、お先真っ暗。
高校を卒業したはいいが、親に迷惑をかけまいと塾に通わなかった。
つまり僕にはなんの身分もなかった。
そして夏に転機が訪れる。
「好きな人ができた。」
そう告げられた。
そう、浪人中に交際していた彼女が浮気をしていたのだ。
今度は涙も出なかった。
もう女なんてたくさんだ。
でも、気づいていた。
浪人の身分で恋愛をしながら、勉強をして大学に進学しようとしていた僕の甘さに。
もう失うものはない。
ここで、自分を変えられなければ一生自分を好きになれない。
「変わりたい。」
そう強く胸に刻んだ。
早速オープンキャンパスとやらに参加した。
自分が本当に行きたい場所はどこなんだ。
都内の大学に片っ端から見学。
ここで僕の人生が180°変わるなどとは予想していなかった。
出会ってしまったのだ。
早稲田大学に。
早稲田大学に一目惚れ
『此処しかない。』
まさに一目惚れだった。
赤ふんどしを履いてるやつ、角帽に学ランの奴。
もうなんでもありだった。
早稲田ならば僕みたいな引きこもりでも居場所があるんじゃないか。
そう確信した。
その日からは振られた彼女のことなんかどうでもよくなった。
誰かがどうとかじゃない、自分が心から早稲田に行きたい。
動機はそれだけで十分だった。
無為に時間を浪費していた高校時代とは変わって勉強に勉強を重ねた。
そして入試を終えて迎えた結果発表当日。
『残念ながら不合格です。繰り返します、残念ながら不合格です。』
6回の無機質な女の人の声によって僕の「早稲田合格」という夢は儚く散った。
実はC大学には受かっていた。
そこに進学することに決めた。
正直もう一度浪人をするのは厳しいと思った。
っていうか無理だ。辛かった。もうあんなに勉強はできない。
無理だ、無理だ、許してくれ。
早稲田を忘れよう。
そう思って、友人と遊ぶ毎日。
楽しかった。あれだけ恋い焦がれた早稲田はもう心から消えかかっていた。
見納めにと最後に早稲田に行ってこの残りの気持ちを成仏させようとした。
早稲田駅に到着して大隈講堂を見上げる僕。
あの無機質な女の人の声と同じ、冷たい壁に見えた。
大隈銅像へ向かう。
「これで最後か」
一人つぶやきながら、大隈銅像に到着。
その瞬間身体中に電気ショックが走った。
「遊ぶのは楽しい…でも、それだけだ。」
早稲田を忘れる事なんて出来るわけがなかった。
「大学に行きたいんじゃない、早稲田に行きたいんだ。」
自分が押し殺していた本当の気持ち。
この場所で4年間を過ごしたい。
ここに通えたらどんなに幸せだろう。
今までのどんな女の子よりも僕の胸をときめかせた。
二浪する恐怖を早稲田に通えない恐怖が上回った瞬間だった。
俺と早稲田。
運命に逆らってみよう。
僕の胸は熱かった。その時、自然と涙が頬を伝った。
2浪目突入
これまでの勉強の姿勢に対する怠惰を改めよう。
そう決心した僕は徹底的に勉強に対する研究をした。
独学のペースを保ちつつ、必要な科目だけ予備校に通うことにした。
お金は自分で工面した。
これ以上親に迷惑をかけれるものか。
自分が逆らった運命のケツは自分で拭くと決めた。
予備校では1人でご飯を食べていた。
友達を作ったら負けだと思っていた。
「絶対受かるんだ」
本当は少し羨ましかった。でも馴れ合いの友達なら要らない。
早稲田だけを見る。
仲良く話をしたり、ゲーセンでたむろしている予備校生達を尻目に強い覚悟で自習室に籠もった。
起床する時には紺碧の空、寝る時には都の西北を聴いた。
家のトイレには似ている英単語を区別する為のカードを置き、風呂場の壁には古文文法を張った。
寝ても覚めても早稲田だけ考えていた。
親には早稲田という新興宗教団体に入らされたのではと心配された。
加えて、僕の成績は一向に上がらなかった。
眠れない夜が続く。
ここまでやって、成績が上がらない。
焦っていた。
でも後ろは振り返らない。
前だけ、早稲田だけを見る。
好きな人の事を考えると胸が締め付けられる。
まさにそれだったのだ。
早稲田に恋して、僕という人間は少しずつ変わっていったのかもしれない。
越冬、そして…
受験は1学部につき35000円、僕にとっては決して安くない。
受験中に合間の時間でバイトをして稼いだ21万円を振り込んだ。
迎えた2度目の早大受験。
もう手応えなんてなかった。
でも、自分が2年間後ろを振り返らずに、前に見える早稲田の像を追いかけた。
もしかしたら、虚像かもしれない。
でも、もしかしたら実像かもしれない。
信じるしかなかった。
迎えた合否発表。
もうあの女の人の無機質な不合格の声が聞きたくなくて携帯を耳から離していた。
『おめでとうございます、合格です。繰り返します、おめでとうございます、合格です。』
去年とは違う無機質な女の人の声が自分を祝福していた。
受験生へ
早稲田に自分が通うなんて思ったこともなかった。
F欄高校出身で、勉強とも無縁な高校生。
でも、ちょっとしたきっかけで早稲田を志した。
無謀も無謀だった。
でもそれを可能にしたのは、自分のことを誰よりも信じていたからだ。
人がどうとかではない。
自分がどうしたいか。
君が早稲田に行きたいのならその扉を開いている。
あとは君がどうするか。
早稲田で待ってるよ。
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